最終更新日: 10/21/2025
望ましい行動を増やし、望ましくない行動を減らすためには?
4. トレーニング
モルモットは「しつけられない」「覚えられない」「学習しない」などとよく言われます。学術の世界でも、他の齧歯類より訓練が難しいとされており[1]、行動実験※1の報告数はラットと比較すると2025年現在でも0.6%に満たないのです(PubMed: rat & operant vs guinea pig & operant, c.f. [2])。
しかし、実際にモルモットと暮らしていると、彼らが数多くのことを「覚えた」ことに気づくでしょう。例えば、
- ヒトが近づくと(聴覚・嗅覚刺激):ヒトに接近する/立ち上がる/ケージの入り口から顔を出す(1)
- 冷蔵庫の開閉音がすると(聴覚刺激):鳴き声をあげる/立ち上がる/ケージの入り口から顔を出す(2)
- グルーミング用のゴム製グローブを取り出すと(嗅覚刺激):「グルルル」と鳴く/飼い主から離れる(3)
1~3のような行動は、モルモットがすでに各刺激を「覚えた」ことを示しています。1と2では 各行動に後続して好物が貰える/貰えたことがある のでしょう。3ではより古典的な学習※2が行われたようです。おそらく、グローブ(のゴムの匂い)が不快(くすぐったい?)と結びついた(対呈示されることでグローブのゴムが身体に触れなくてもグローブの匂いがするだけで警戒音を発声したりグローブから逃げたりする)のでしょう。
このように、モルモットは特定の行動を増加/減少させることができます。ただし、
- なんでもできる わけではない
- いつでもできる わけではない
- いつまでもできる わけではない
- 個体差 あり
ということを理解しておきましょう。あなたのモルモットに何かを「覚えさせたい」場合、
- モルモットの習性
- モルモットの身体的な限界
- あなたのモルモットの好物
- あなたのモルモットの傾向・癖
- 増やしたい行動の直後 に好物を与える
これらを事前に把握しておく必要があります。これにより、モルモットが何をできるか(できないか)、モルモットに負荷を与えることなく判断し訓練することができます。
それでは、いくつか事例を見てみましょう。
※1:【オペラント条件づけ】行動の結果によってその行動の頻度が変化するタイプの学習([3])
※2:【レスポンデント(的な)条件づけ】他の刺激と対呈示しなくても反射を引き起こす 無条件刺激(皮膚への刺激:ゴムが皮膚に刺さる、逆毛) 、 皮膚への刺激 によって引き起こされる反応は 無条件反応(身をよじる) とする。 皮膚への刺激(無条件刺激) と対呈示することで警戒音を発声したり逃げ出したりするようになった ゴムの匂い は 条件刺激 という。条件刺激のみの提示によって引き起こされる反応(警戒音の発声・逃げ出す)を 条件反応 という。条件刺激を無条件刺激と対提示する手続きを レスポンデント条件付け という([3])。
4-1. トイレトレーニング
まずはご自身のモルモットの排泄に規則性があるか確認しましょう。
モルの場合、トイレでくつろぐことが多く 四隅 で 自分の臭いが強く残る場所 に排泄する傾向がありました。これを利用してトイレトレーニングを行いました。具体的には図1のような三角形のトイレを用意し それ以外の場所で排泄をした場合はすぐに取り除き 廃棄するかトイレに溜めるようにしました。トイレに溜まった糞尿は溢れるまで捨てずにおきました。糞尿以外にも糞尿のついたチモシーも使いました。特定の場所に臭いづけするためです。
その結果、モルは数日で排泄の9割をトイレで行うようになりました。ただし図3~5の通り、トイレ以外の場所や私の膝の上で排便してしまうこともありました。私としてはそれすら可愛くて仕方なかったのですが。9割の排泄物が決まった場所に溜まっていると掃除はとても楽でした。しかし、それも2歳半頃まで。体調を崩したことで、徐々にトイレ以外の場所での排泄が増えていきました。モルモットもヒトと同様に、病気や加齢によって「できていたことが、できなくなってしまう」ことがあるようです。
メルの場合、ケージ内のいたるところに糞を撒き散らす傾向がありました。他方、モルと同様にトイレでくつろいだり食事することが多い傾向にあったので(図6~12)、この傾向を使ってモルと同様、トイレにのみ排泄物を溜めるようにしました。しかし、トイレ以外の排泄物をどんなに迅速・頻繁に回収しても「勝手なことするな!」と言わんばかりに、回収したそばから、すぐに排泄されました。自分の排泄物(臭い)で縄張っているのかもしれません。トイレにのみ餌を置いたりしてみましたがダメでした。
至る所に排泄し場合によっては排泄物の上で寝ることもありました。メルは全身が白いので汚れが目立ちました(図13)。
レムの場合、元々気性が荒いため(勢いよく走り回る、牧草に潜り込む、トンネルを頭で跳ね飛ばす、など)、ケージ内は必要最低限の物のみ配置しました。彼が最も安全で汚れにくい環境を優先した結果、トイレの設置・トイレトレーニングは諦めました。
4-2.「懐いた!」を増やす
モルモットは人懐こい とよく言われます。我が家では モル > レム > メル の順で懐っこいと言えます。ただし、元からいわゆる人懐こかったのはモルのみです。
モルの場合は、特に意図的な訓練をせずとも、餌がなくとも、まるで「撫でてください」と言わんばかりに、我々の元によく寄ってきました。
メルの場合、餌や餌がもらえる気配(冷蔵庫の開閉音や餌の匂いなど)がなければ、近寄ってくることは絶対にありませんでした。ただし次の動画のようにおでこを撫でられると目を細めて(時にはグルグル言いながら)されるがままになることもありました。
レムは今、訓練中です。彼と私たちとの関係において、彼の「噛み癖」は深刻な問題でした。しかし、訓練の甲斐あって ヒトや服を噛む 行動が減り 舐める 行動が増えてきました(時点での「噛む行動」非出現連続日数はです。なお、ここでカウントしているのは、給餌時(訓練中)における「噛む行動」です。訓練時間外に私たちの不注意によって彼を驚かせて噛ませてしまったケースも含めた記録は図19をご覧ください)。
ちなみに本セクションで「懐く」「懐いた」とは、「飼い主が餌を持っているか否か」に関わらず、
- 自ら飼い主に寄ってくる
- ケージから顔を出す
- 著者が頭を撫でても警戒音を出したり避けたり跳ね除けたりしない
といった行動・状態を指します。
それでは彼らを懐かせる手順をご紹介します。ここでは 「飼い主の膝の上に乗り、飼い主の身体に手を掛けて、飼い主の顔がある方に鼻先を上げること」 を最終目標とします。
大まかな手順として、以下のように、スモールステップごとに学習させます。
ちなみに多くのモルモットに、「ヒトに接近する」「立ち上がる」傾向があると思います。その直後に餌をくれた経験があるからでしょう。動物園やアニタッチに行くとこれらの傾向を確認できます。ここではこの2つの傾向を使って、まずは ステップ1:
膝の上に手をかける を学習させましょう。図14をご覧ください。彼らが接近し飼い主の膝に手を乗せたら すぐ
に好物(我が家では小分けにした牧草代用ペレット)を与えます。なお、図14では「膝の上」と記載されていますが、別に脚のどこでも構いませんし、手や腕でも構いません。
肝心なのは「増やしたい行動」(ターゲット行動、ここでは「膝の上に手を乗せる」)が出現した直後に好物を与えることです。これを 2, 3回繰り返す だけで ターゲット行動は増加 します。また、増加するだけでなく 行動直後に好物を与えなくてもしばらくの間続き ます。
次に、 ステップ2: 膝の上に乗る を学習させましょう。図15をご覧ください。すでに「膝の上に手をかける行動」は確立されていますが、膝の上に乗らせるためには膝の上に手を掛けただけでは好物を与えず、好物の香りで膝の上まで誘導させます。膝の上に乗ったら すぐ に好物を与えます。これをやはり2, 3回繰り返すだけで、ターゲット行動(ここでは「膝の上に乗る」)は増加・定着します。
続いて、 ステップ3: 膝の上でお腹に手をかける を学習させましょう。図16をご覧ください。すでに「膝の上に乗る行動」は確立されていますが、膝の上に乗ったらすぐに好物を与えず、飼い主自身の体のそばに手をつくよう、好物を用いて誘導します。モルモットが飼い主の腹部に手を置いたら すぐ に好物を与えます。これをやはり2, 3回繰り返すだけで、ターゲット行動(ここでは「膝の上でお腹に手をかける」)は増加・定着します。
最後に、 ステップ4: お腹に手をかけたまま後ろ足で立ち上がる を学習させましょう。図17をご覧ください。すでに「膝の上でお腹に手をかける」行動は確立されていますが、後ろ足で立ち上がるよう好物を用いて飼い主の胸部付近に誘導します。モルモットが後ろ足で立ち上がり、手を飼い主の胸部方向に少し移動させたら すぐ に好物を与えます。これをやはり2, 3回繰り返すだけで、ターゲット行動(ここでは「お腹に手をかけたまま後ろ足で立ち上がる」)は増加・定着します。
以上が最終目標「飼い主の膝の上に乗り身体に手を掛けて鼻先を上げること」を覚えさせるための手続き・過程でした。このように、モルモットの特定の行動(ターゲット行動)を増やしたい場合、元々彼らが持っている(倫理的に問題ない)「傾向」や「癖」を使い、尚且つ、ターゲット行動の生起直後に好物を与えると、高確率で成功します。逆に「傾向」や「癖」に該当する行動を減らすのは後述の通り苦労しますが・・とにかく試してみてください。
4-3.「噛まれた!」を減らす
モルモットの行動レパートリー(というより習性)には 噛む 行動があります。例えば、飼い主がモルモットに対して、
- 急にお尻付近を触る
- 急に鼻の前に手を近づける
また、給餌を要求するときに服の裾を噛んで引っ張ったり(レム)、特定の(おそらく嫌な)条件下に置かれると万力のように噛んだり(メル)することもあります。
「防御」として噛む行動は、減らす必要はありません。飼い主に非があります。彼らにとっておそらく不快であろう接触は極力避けるべきです。
他方、給餌に関してはどうでしょう?確かに彼らが「好物を欲しいとき」にできることとして「鳴く」や「噛む」が生じても仕方ない気はします。しかし、我が家に限って言えば、モルやメルは、給餌の気配を検知した時に、我々に接近してきたり膝の上に手を乗せて我々を見上げて待つといったことは頻繁にありましたが、噛みながら引っ張るということはまずありませんでした。噛んだり引っ張ったりして給餌をせがむのはレムだけなのです。
ではなぜレムは噛むのか?
レムは元々、いわゆる「噛み癖」があるようです。我が家に来た時から、おでこにそっと触れようとしただけで噛みつこうとしてきたり、近づいてきたモルに噛みつこうとしたり、俗にいう「警戒心が人一倍強い」というやつかもしれません。私たちは何度も噛まれそうになったり、服を噛みながら引っ張られたり、毎日のように手指を噛まれていた時期もあります。我が家に来る前、私たちが彼に初めてペットショップで出会った時でさえ、指を噛まれて出血したほどです。レムの「ヒトやヒトの服を噛む頻度」は我が家の他の2頭よりも明らかに多いのです。それは、単に「人一倍」歯痒いのかもしれませんし、生後、歯を剥き出さなければならない経験が多かったのかもしれません。あるいは何か生得的な要因に起因するのかもしれませんし、噛んだ後に餌を貰えた経験が多いのかもしれません。
私自身、彼が我が家に来たばかりの頃、肌を噛まれたり、服を噛みながら引っ張られた直後に、彼の好物を与えた経験が少なからずあります。というのも、彼は「早く頂戴」と言えない代わりに「噛む・噛んで引っ張るしかないのだ」と考えていた時期があるからです。
しかし、悠長に構えてもいられなくなりました。彼が我が家に来て2年ほど経過しても噛み癖は一向に減らず、むしろ頻度・強度が増しました(私の対応を考えれば当然なのですが)。彼が給餌時に噛むのは大抵服なのですが、服の内側にある私の皮膚も、しばしば巻き添えを喰らいました。今でも私の肌には彼による咬み傷が無数に残っています。
これって、レムにとって必要な行動なのだろうか?私自身、単純に痛いですし、出血すると掃除や給餌を中断せざるを得ず面倒です。彼と接する上で飼い主が痛みを感じる機会は少ない方が良いのではないか?
そう考え直し、特に給餌時の「ヒトの肌を噛む」、「服を噛んで引っ張る」といった 噛む 行動を、彼らの行動レパートリーにある 舐める に変えようと決意し、そのための手続きを開始しました。ちなみに、本手続きの「開始日」や「噛む回数/1日当たり」などを開始日から記録していませんでした。このことは悔やんでも悔やみきれません。
さて、手続きは図18の通り、
- 噛む行動が生じても 絶対に 好物を与えない
- 舐めたら すぐに 好物を与える
という流れです。図で書くと単純なのですが、実戦はかなり困難です。
まず、噛む行動はなかなか減りません。行動の直後に好物を与えなくてもです。一度「習慣化」した行動は減少しにくいです。工夫が必要です。
どうすれば良いのか?注目したのは、彼が 噛みながら引っ張っていた服から口を離したとき です。当然ながら、彼は噛む行動を永遠に継続できるわけではないのです。服から口を離したときに、好物を与えます。これを何度か繰り返します。噛まなくても好物がもらえることを"覚えて"もらいます。
次に、彼の口が私の体のどこかに接触した時に すぐ に好物を与えます。これはレムに限ったことではありませんが、彼らは餌がほしいとき、餌に向かって鼻から接近してきます。彼らの出っ張った鼻の直下に口があります。これを利用し、例えば彼の口が私の太ももに少しでも触れたら好物を与えます。これも何度も繰り返します。なお、レムの口は昔から半開きのことが多いです。この手続きの中で、歯が私の皮膚に当たった時は好物を与えません。唇や舌が当たった時に すぐに 好物を与えます。これを毎日続けます。
この手続きを開始してどれくらい経過したか、正確に記録していないことを本当に悔やみますが(写真・動画に基づくと2025年6月頃から開始)、「舐める行動」は他の行動と同様、割とすぐに定着しました。
しかし、噛む行動に関しては「完全に無くす」ことがなかなか難しいです(時点での「噛む行動」非出現連続日数はです。なお、ここでカウントしているのは、給餌時(訓練中)における「噛む行動」です。訓練時間外に私たちの不注意によって彼を驚かせて噛ませてしまったケースも含めた記録は図19をご覧ください)。
今では「甘噛み」程度で噛む(と言うより歯を立てる)ことが本当に稀にあるくらい。給餌時間外でもまず噛まなくなりました。では、どのような場合に、今でも「噛む」のか?それは 舐めているにも関わらず「すぐに」好物が与えられないときです。
実はこの手続き、彼のケージを掃除しながら行なっています。正式に実験しているわけではないので、例えばチモシーを袋から取り出しているときに舐められた場合、手が塞がっていてすぐに与えられないことがあります。すると「早く頂戴」と言わんばかりに服や肌を噛んで引っ張ることが今でもたまにあります。また、彼は「開口状態」なので「舌で舐める」と「歯がぶつかる」が同時に生起しやすいのも確かです。他にも、いつもの世話人(私)以外の人物(e.g., 同居人,友人等)の声や誤った対応(e.g., 低い声,噛まれた時におやつをあげる等)でも「噛む行動」は、ぶり返します。
彼の噛んで引っ張る行動を完全に無くしたいものですが、私自身も日常生活を送っているのでなかなか難しいです。しかし、噛まれる機会の減少は、私にとっては間違いなく良いことです。出血に伴い手間や時間が削られることもなくなりましたし、肌の生傷もなくなりました。給餌のタイミングを厳守し同居人による不適切なタイミングの給餌さえ制御していれば「噛む行動」を「完全に無くす」ことができるはずです。継続します。
余談ですが、レムは、餌をもらう場所や貰うまでの道のりも「覚えて」います。毎回決まった道順で給餌を求めにきます(私の右膝に降ろされた後、左回りでトンネルを潜ってから私の左足に到達)。また、「舐める」→「(飼い主の)声が聞こえる」→「(舐めるのを止め)私の腿に手をかけ上を見上げる」→「餌がもらえる」という手順も「覚えて」います。
4-4.「おやつの与えすぎ」を減らす
基本的には毎日決まった時間帯(朝晩)に、月齢を踏まえて決まった量のおやつ(青果や牧草大用ペレット)を与えます。しかし、それ以外の時間帯でも彼らが鳴いたりじーっとこちらを見ていたりすると、ついついおやつをあげたくなってしまいます。
とはいえ、あまり与えすぎると栄養過多や肥満等、健康に悪影響を及ぼしかねません。 鳴けば餌が貰える (図20)と「思われ」ても困りますし、私たちとしても 餌をあげれば鳴き止む。静寂が訪れる! (図21)ことに慣れてしまうのは、やはり、結果として彼らの不健康につながるので良くありません。
モルモットにとって好ましくない状態として、
- モルモットの 鳴く行動が増える
- 飼い主の おやつの時間以外におやつをあげてしまう行動が増える
この2点が挙げられますが、この2つの状態を改善するには、
- モルモットが鳴いても 飼い主は無視する
これ一択です。しかし、これもまたなかなか難しいことです。飼い主の住居、モルモットの特性や月齢にもよりますが、
- 近所迷惑を回避するためにおやつを与えてしまう
- 給餌時間にも割と鳴く(「鳴いたらあげる」が生じてしまう)
- 可愛くてついおやつを与えてしまう
などが挙げられるでしょう。
特に上記2点目と似ていますが、よく鳴く子だと、気をつけていても 鳴く に後続して無意図的におやつを与えてしまうこともあるでしょう。するとなかなか鳴く行動自体を無くすことができません。
また、頑張って与えることを我慢していても、飼い主側の習慣で一度でも不適切なタイミングで与えてしまうとすぐに「鳴く」が ぶり返して しまいます。
とにかく、我が家では「鳴いてもあげない」を徹底しています。
4-5. 無効な訓練
ここまで、モルモットの 特定の行動を増やす・減らす方法 を紹介してきました。意外と モルモットは「覚えられる」ということをご理解いただけたのではないでしょうか?ご紹介した手続きを応用し、ぜひお試しいただければと思います。
ただし、冒頭でもお伝えしたとおり、モルモットが何でもできるようになるわけではありません。極端な例として、どんなに良きタイミングで餌付けしても、モルモットはヒトの音声を発声できるようにはなりません。
また、 無効な訓練の代表例 として、
- モルモットの特定の行動(例:噛む)を減らしたいとき、ヒトの言語で注意する(例:「噛んじゃダメ!」)する
を挙げます。これは、少なくとも我が家の3頭のモルモットには全く効果ありません。もしあなたがモルモットを飼っていて反例をお持ちの場合、あなたは実は大きな声を出していませんか?あるいは大声とともに体を持ち上げるといった、モルモットが驚くようなことをしていませんか?
個体によっては、例えば「噛む」に後続して毎回身体を脅かされるような刺激が呈示されると噛まなくなるかもしれません。しかし、これは彼らに大きな身体的負担をかけますし、神経系や脳に大きな損傷を与えるリスクもあります。まさに「罰」です。私は「罰」で彼らの行動を制御することは好ましくないと考えています。
それでは「噛む」に後続して好物を与えないのも罰ではないか?と思う方がいるかもしれません。確かにこれも罰に含まれるかもしれません。しかし、特定のタイミングで好物を与えないことは彼らにとって致命的な損傷になり得ますか?
我が家では前述の通り、「噛む」行動を無くし、その「代替行動」として「舐める」行動を増加させるために「報酬」(好物)を用いて訓練中です。「噛む」も「舐める」も「開口」から生じる行動ですが、「噛む」と「舐める」を同時に行うことは困難です。完全に「噛む」行動をなくすことは難しいかもしれませんが、「罰」を使うことは絶対にしません。
ご自身とモルモットとの関係性において、好ましくない行動を減らしたい場合、どうすればお互いにとって良いか、考えてみてください。
参考文献
- [1] Ojima, H., & Horikawa, J. (2016). Recognition of modified conditioning sounds by competitively trained guinea pigs. Frontiers in Behavioral Neuroscience, 9, 373, doi:10.3389/fnbeh.2015.00373.
- [2] 小島久幸. (2017). 行動に関連した神経ネットワーク;音脈分擬の基盤をなす音節間の時間間隔を脳に見る. KAKEN 2016年度研究成果報告書.
- [3] 杉山尚子., 島宗理., 佐藤方哉., Malott, R. W., & Malott, M. E. (1998). 行動分析学入門, 産業図書.