投稿日: 11/20/2025
最終更新日: 11/20/2025
脂肪腫と加齢:完 ※かかりつけ医:有
2023年9月1日~9日。モル。食欲はあるようで、好物(りんご、パプリカ、レタス、チモシーの穂など)をよく食べている。他方、うんちのサイズは(個数は問題ないものの)相変わらず小さい。また、以前のように後脚だけで体重を支え前脚を私の太ももなどに乗せることが難しくなったようだ。23/09/08の各写真で確認できるように、左前足の位置もおかしい。他に気づいたこととして、以前にも増してタオルに包まるようになった。さらに、歯がゆいのかいつもよりも枝をよく齧っている。そしてなんと、好物だったはずのニンジンをあまり食べなくなった。
10~12日。1週間前まで辛うじて1000 g台だった体重が、ついに1100 gを超えた。以前にも増して腫瘍部を除いた全身は全体的に骨張っているため、脂肪腫が重たくなっているのではないかと推測する。摂取量や排泄量は依然として歳相応に見えるが、活動量は徐々に減っている。 よく見ると足の裏に黒い「かさぶた」らしきものが・・あるいは汚れているのかと思いぬるま湯で溶かそうと試みるが変化なし。少し引っ張ると嫌がるため角質増多と判断し先生にメールで相談した。すると「床に擦れてできる、硬い皮の部分なら切っても大丈夫」とのこと。汚れが溜まりそうなので言われた通り切った。 他にも、目ヤニと目周りの乾燥も気になった。適宜ウェットティッシュで除去し馬油を塗った。
13~14日。思い返せば「最後の日」を除いて、この2日間が最も、体調悪そうに見えた。もう頑張らなくていいんだよ、と何度も思った。 13日の朝は、相変わらず、よく食べ、よく出した。他方、お尻は汚れがち、お腹と脚の内側に関しては禿げているようだ。床ずれ的な状態かもしれない。 そして何より、立ち上がれないことが多くなった。立ち上がるどころか方向転換すら困難な時がある。 身体全体のバランスを保つことが難しく、ひっくり返りそうになることもある。歩行困難も認められた。そもそも歩行自体少なくなった。 四肢自体はそれぞれ「反射」、「動かす」、「力を入れる」等正常に可能ではある。また、私たちが背部腫瘍を支えてあげると歩行がやや「正常」に近づく。 摂食や排泄等が困難になる前に一度診てもらった方が良いか、そして何か家でできることはないかメールで先生に尋ねると「小さな車輪を付けた柔らかい板にのせたら足を動かしやすくできるかもしれない」とのこと。モルモットの車椅子か。検索してみると少なからずヒットする。画像を参考に資材を集めることにした。 13日の夜あたりから食欲が減ったように見えた。豆乳やサプリは摂取していたが、彼の好物であるリンゴやニンジンをあまり食べない。 目の輝きを失いつつもあった。うんちが黄色っぽいのも気になる。
当時、できるだけ一緒にいる時間を朝晩取っていたが、モルを見ていると私は始終涙が止まらなかった。本当にヒトは自分勝手で愚かだ。 スッと死なせてあげられるのならばこのままでもいい。私たちは単なる延命を望んでいない。 しかし、咀嚼不足で不正咬合になったり、足が動かくなり壊死したり、臓器不全などで辛い思いをさせたくなかった。一方で給餌や世話自体が延命につながってしまう。とはいえ給餌もお世話も絶対にやめるべきではない。 一緒にいる時間をできるだけつくり、食べられるものをあげ、いずれ食べられなくなるまで見過ごすので良いのか。どうすることが彼にとって最善なのか分からなかった。
本当に迷惑だろうが、都度先生にメールで「他にできることはないか」相談した。すると先生もほぼ同意見だった。これまでも彼の言動の端々に垣間見えていたが、彼は延命行為に否定的な立場をとっていた(”動物にとって最善”を第一とするのだから当然ではあるが)。「できることはわずかにあるが、もしそれがうまくいって寿命が延びても脂肪腫の物理的・ネガティブな影響を受け、結果モルを苦しめてしまうかもしれない。とはいえ、彼らは痛かろうと辛かろうと生きようとするので緩和措置はとっても良いかもしれない。なんでも相談して」との旨、伝えられた。メールでのサポートは本当に有難かった。モルの状態を鑑みて必要に応じて診てもらうことにした。
もう思い通りに動かせない身体で必死に私の方に顔を向けようとしているモル。
15~18日。 15日午前中くらいまでは調子が悪く見えた。特に寝起きなどは動きが非常に緩慢だった。しかし午後から不思議と体調がごくわずかではあるが回復した。まだ自力で体のバランスを保つこと(常に前両足を踏ん張っていた)ができたし、這いつくばるようにわずかながら移動もできた。 食欲もやや回復し、ニンジンやレタス、チモシー(好ましくはないが、昔から好きな「穂」の部分)やモルモットセレクションプロ(非常食)を食べていた。 他方、うんちにはゆるいものが混じった。量も減っていた。何より、メルがなくなる前日に放っていた「死臭」がした。 また、今、写真や動画を見返すと、下半身が捩れた状態であることが多くなっていた。眼力も弱い時が多い。私たちは家にいる間は大抵彼の身体を撫でていた。 それと、車椅子を作り試行してもらった。しかし、床の上では足が滑ってしまい、最終的に後脚が車体に乗ってしまう。一方、タオルの上だと車輪が動かない。部品や車幅、車高を見直し作り直そうとしたが、間に合わなかった。
19日、朝。 モルをそっと抱き上げる。私の手のひらの感覚が前日までと明らかに違った。体が「くの字」で硬直しているようだった。触感がメルの死後硬直と似ていた。ケージ内を見ると、うんちは出ていたが量は少ない。肛門付近に詰まってもいたので指でそっと引っ張り出した。 食欲も明らかに減退している、何も食べない。眼力も弱い。そして前日までなんとか踏ん張ってバランスを取っていた前脚も力尽きたようだった。ぐったりしているが私の手に手を乗せてくれる。 職場に有給を申請した。きっと今日だなと思った。最後のときをモルと一緒に過ごしたい。
18時頃。 しきりに脚や顔を擦っていた。よく見ると(おそらく)ハジラミがたくさん湧いていた。 シラミは全身に発生していたが、特に鼻先や耳の後ろで大量に発生していた。 私たちはシラミを手やコロコロで取り続けたがキリがなかった。むしろどんどん増えていった。 タタリ神と化した乙事主のようだった。私たちはモルを撫で続けた。
余談だが、私が綺麗好きなため我が家は清潔だ。もちろん彼らの環境も彼ら自身も毎日清掃している。 なので「なぜシラミが?いつから?感染症?死ぬ間際に発生するのかしら」と不思議に思った。 後日先生がくれたメールと自分で調べた結果を統合すると「免疫力低下に伴い、元々毛穴に寄生しているシラミが宿主の危機を察知し次の寄生先を求めて体表に出てくる」とのこと。
21時過ぎ。 お腹がゴロゴロと鳴るようになった。お腹が鳴るのは(私が把握している限り)点滴をうった時以来だ。 1時間くらい経つと、声を出して鳴く(唸る)ようになった。彼は1歳半頃にメルが家に来た途端、全く鳴かなくなったが、これまでに聞いたことのない鳴き声だった。 シラミも増え続けていた。
23時過ぎ。 私の手の中でモルは亡くなった。直前まで鳴き続きていた。最後に息を大きく吸って全身が硬直した。生まれて初めて「息を引き取る」という表現が比喩などではなかったのだと知った。 息をひき取る前後に少しだけ排泄もあった。
火葬の予約は翌日に取れた。メルの時と同じ業者だ。火葬までは冷凍庫で保管した。火葬後の骨は骨壷に入れて保管している。
あとがき。
モルは、私が生まれて初めて一緒に暮らした動物だ。彼を連れて帰る際、自分に飼育ができるのか不安で仕方なかった。「やっぱり返します」と、ペットショップに引き返そうか何度も迷った。 さらに帰宅後、モルは隠れ家(トンネル)から全く出てこなかった。私の不安は翌朝に彼が出てくるまで続いた。彼が餌を食べるためにトンネルから顔を出した時、今までなかった物質が脳内を駆け巡った気がした。
モルはとても人懐っこかった、懐疑的な私が疑いようのないくらいに。自ら私の膝の上に乗りくつろいだり、私が音を立てると空腹時でなくてもケージの入り口から「おでこ撫でてくれ」と言わんばかりに顔を出してきた。実際に撫でるとうっとりしていた。体が大きくなるまでは、トンネルの上で夜遅くまでバイト帰りの私を待っていてくれたりもした。 ニンジン好きなモル、新聞紙好きなモル、メルのことが気になってしょうがないモル、小さかったモル、徐々に耳が垂れていったモル。しばしば同じ釜の飯を分け合ったりもした。私はモルから離れられず、大学を若干サボりがちにもなった。
モルがいなくなったら私は生きていけないと思っていた。しかし、実際には生き残っている。毎日ふとモルを思い出す。バイオリズムによって涙が止まらなくなる。 モルが亡くなったら食べて自分の一部にしようと思っていたが、できなかった。私は案外普通の人間だった。
実は私は昔から「ペットショップ」という存在に否定的な立場をとっている。にもかかわらず、当時、自分の寂しさを紛らわすために、半ば衝動的に、モルをペットショップで購入した。 私のようにペットショップで購入する人間がいるからペットショップが無くならないのだと思う。同時に、モルに出逢えて、モルと一緒に暮らすことができて、本当に良かったとも思っている。
本記事『脂肪腫と加齢:完』を書き上げるまでものすごく時間がかかった。なぜなら、当時のモルの写真や動画を見ると涙が止まらなくなるからである。 しかし、モルの最期やモルを通して学んだこと、かかりつけ医から教わったことなど、どうしてもまとめておきたかった。モルの記録をきちんと残したかった。
それは自分のためでもあるが、同時に、同じような状況に陥った飼い主の方に、少しでもお役立ていただけないかと思ったからである。 というのも、当時、モルモットの脂肪腫を放置するとどうなるのか、情報があまり見当たらなかった。 今でも、例えば「脂肪腫で手術をした」という短いネット記事や写真などは(動物病院や英語圏の発信も含め)多数ヒットする。しかし、それらは基本的に断片的な情報にとどまり、術後どうなったのか、仮に死んだ場合でも死ぬまでの様子はどうなのかはわからない。とにかく体系的な情報が少ないのである。 論文に関しては、レトロスペクティブな報告はちらほら見当たるが、事例研究は非常に少ない。いずれにせよ、一般人である飼い主が飼育に役立てられる情報は(論文なので仕方ないが)あまりない。例えば、Webb Cら(2024)では、術後どんな薬を投与されていたか記載がある上に3ヶ月後まで追跡されている。しかし、薬の種類や「3ヶ月後も臨床的に正常」ということがわかったところで飼い主がモルモットにしてやれることはない。 医学書は参考になることが多いが、なかなか手に入りにくい。 飼育本に関しては、こういう時に役立つ情報は皆無と言っても過言ではないだろう。 大切な我が子が不調の時に「わからない」は「不安」だ。できるだけ具体的な情報が欲しいと思ってしまう。優秀なかかりつけ医がいたとしてもだ。 なので、私と同じような飼い主の方に「一事例として」具体的な情報を共有したかった。モルモットの背中に脂肪腫ができて切除しない場合、どのような経緯を辿る可能性があるのか知っていただけたらと思った。
とはいえ、私たちにはできることしかできない。できることはできるだけやるが、モルの件に関しては、できる限りのことをできたのではないかと思っている(これ以上私にできることはなかった)。 病気に罹患するのも自然の一部だ。痛みや苦しみはできるだけ回避 and/or 和らげてあげたいが、自然の流れに逆らってまで長寿を望んでいない。 私には今、レムがいる。彼ができるだけ長い間健康でいられるように、居住環境や食餌内容等、試行錯誤を続けていきたい。
参考文献
- [1] Webb, C., & Herrman, A. (2024). Free‐floating intraperitoneal necrotic lipoma in a guinea pig (cavia porcellus). Veterinary Record Case Reports, 12(4), e982. doi:10.1002/vrc2.982




























































